マシニングセンターの工具について

工具治具

 この記事はこんな人に向けて書いてます。

 今、機械加工の仕事していて「ネットで調べている」とか、営業職や、技術職だけど「少し機械加工の知識も必要」とか考えているひとに、工具の基本的な説明をします。
マシニングセンタ―、フライス盤、中ぐり盤の工作機械で使う工具についての記事です。

 マシニングセンターは自動で工具交換ができる ATC(Automatic Tool Changer )がついています。つまり一台で多く工具を使うことができます。その分、切削工具の知識も必要になりますね。

 それでは最初に工具の構造について説明して工具の種類を紹介します。

工具の構造

 工具の一般的な構造を4つ説明します。
「ソリッドタイプ」「ロー付けタイプ」「刃先交換タイプ」「ヘッド交換タイプ」

ソリッド

 一つの素材から作られています。切れ刃が摩耗したら再研磨して使います。
 原材料費の占める割合が大きくなります。

ろう付け

 鋼材などの母材に切れ刃になるハイス鋼や超硬などを「ろう付け」(接合)した工具です。ソリッド同様、再研磨します。
 原材料費は抑えられるます。

刃先交換

 切れ刃を交換できるような構造で、切れ刃を「スローアウェイチップ」、単に「チップ」、「インサート」とも呼ばれます。

 切れ刃は使い捨てになります。コストパフォーマンスに優れています。
 チップは被削材により、いくつかの種類が発売されていることが多く、チップの交換で違う被削材にも使えます。

スローアウェイとインサート

 刃先交換方式は「スローアウェイ」「インサート」などと言われていますが、
 スローアウェイ(Throw away)遠くへ投げる➞使い捨て という意味で使われるようになったそうです。
 インサート(Insert)挿入するという意味なのでそのまま分かりやすいですよね。

 切れ刃部分を私はチップと呼んでいますが、工具屋さんは、”インサートじゃないと外国じゃ通じないよー” って言われた記憶があります。
 チップは切りくずの意味になるそうです。


ヘッド交換

 ヘッド交換タイプは工具の先端部分(ヘッド)がソリッドで作られていて、根本部分(ホルダー)に装着するタイプです。

 ヘッドは再研磨できるものもありますが、一般的には使い捨てが多いと思います。刃先交換タイプと同様にいろいろな被削材に対応している場合が多いです。

穴あけ

 穴あけはとても単純で一般的な加工ですね。

ドリル

 穴を加工する最も一般的な工具です。

ヘッド交換タイプのドリル

 大きいドリル穴の場合は、小さいドリルで下穴をあけた後、加工します。機械のパワーとワークの固定の強さ(段取り)を考慮して決めてます。
 ドリル加工はドリル直径より実際の加工直径が大きくなりやすいので制限(公差)がある場合はリーマーや、中ぐりで仕上げます。

 ソリッドタイプ、刃先交換タイプ、ヘッド交換タイプ、刃先ロウ付けタイプもあります。形状も一般的には刃先は尖ってますが、フラットなドリルもあります。

センタリング

 加工の際は、いきなりドリルで加工すると穴がズレるのでセンタリングという印をつける作業をします。(*ドリルの種類によってはセンタリング不要、または不可のものもあります。)
 センタードリルという専用の小径の短いドリルで2㎜程度あけてます。また、リーディングドリルもセンタリング工具ですが、円錐のくぼみ状の加工になり、ドリルの進入ガイドになります。

タップ

 めねじの加工をする工具です。

ポイントタップ

 下穴を加工した後、タップで加工をします。「M6のめねじ」なら下穴はφ5というふうに規格で決まっています。
 一般的なタップの先端は「食い付き」いう不完全なねじになっているので食い付きの長さを余分に深く加工します。

 基本的にソリッドタイプです。

 タップは切りくずが加工の妨げになるので用途に応じて使い分けます。

  • ポイントタップは貫通用で切りくずが加工方向(奥)へ出ます。
  • スパイラルタップは切りくずが手前に出ます。
  • ハンドタップは切りくずが小さくなり下へ落ちます。
  • 転造タップは切りくずが出ないタップです。

 難削材や大きい直径のタップになるとタップ工具に溶着してねじ山が潰れることがあります。また高硬度のワーク(被削材)だと工具の摩耗が早く、すぐ切れなります。
 対処法は、エンドミルでのヘリカル切削を行います。ねじ加工用のエンドミル(カッター)が市販されています。加工時間はかかりますが、上記のトラブルは少ないのがメリットです。

ヘリカル切削

回転工具をらせん状に同時に3軸を動かして加工する方法。
円を一周描く間に深さ方向も移動させて繰り返す感じです。

リーマー

 仕上げ面がをきれいにしたいときや、穴径に制限(公差)があるときに使う工具です。

テーパーリーマー

 仕上げ代を残して下穴をあけてからリーマーで加工します。仕上げ代はリーマーの直径や種類によっても変わりますが直径で0.5~0.2㎜つけます。
 「ドリル➞エンドミル➞面取り➞リーマー」の手順で加工すると穴の直径寸法、位置精度ともに良好な結果になります。
 リーマーは直径の調整ができないので、主軸に「振れ」があると加工直径が大きくなるので注意が必要です

 ソリッドタイプ、ろう付けタイプが一般的です。

 リーマーも貫通用や止まり穴用の切りくずの処理を考慮した設計のものがたくさんあります。また、下穴の加工がいらないリーマーもあります。一般的に小径はリーマーで加工して、直径が大きくなるとボーリングで仕上げます。

ハンドリーマー

 ハンドリーマーは部品の取り付け位置を復元できるように部品を取り付けた状態で共加工するとき手作業で加工する工具です。
 平行ピンを入れる場合と、より復元性の高いテーパーピン(円錐型)を入れる場合があります。 テーパーピンを使う場合はテーパーリーマーを使います。

バイト

 旋盤や平削り盤や中ぐり盤などで使われる基本的に一枚刃の工具です。
 マシニングセンターではボーリング(中ぐり)にバイトを使います。

旋盤用スローアウェイバイト

 バイトの種類を下にまとめます。

スローアウェイバイト

 刃先交換タイプのバイトで、刃先に取り付けるチップ(スローアウェイチップ、またはインサート)は摩耗したら交換できる。広く使われている主流のバイトです。

完成バイト

 ソリッドで作られているバイトで、切れ刃はグラインダーを使ってユーザーが成形します。
 完成とは熱処理が完了していることを指すそうです。バイトを使う人が自分で焼き入れをしていた頃の名残りですかね。

ろう付けバイト

 鋼材の先端に刃先になる工具材料が「ろう付け」(接合)されたバイトで、完成バイトと同様に切れ刃はユーザーが成形します。

ボーリング

 ボーリングは直径や長さなどの要求が多い工具です。ボーリング工具のメーカーもそれに対応できるようユーザー側で組み合わせて使えるような仕組みにしてます。

 旋盤で直径の寸法を合わせるのは目盛りなど機械側で合わせますが、マシニングセンターでは基本的に手作業で合わせます。目盛りがついているボーリングバーを使っても神経を使う作業になります。

フライス

 フライス工具は回転させて外周についた切れ刃がついている工具です。
 ミーリング、カッター、エンドミルなどもフライスと同じ意味で使われたりします。

ソリッドタイプのエンドミル

 刃先交換タイプ(スローアウェイ)、ソリッドタイプ(全て同じ素材)、ヘッド交換タイプなど多くの種類があります。

正面削り

 平面の加工に使います。能率を上げるため比較的大きい直径で「刃先交換」タイプが主流です。
 また、いろいろな呼ばれ方をします。

  • フライス
  • フェイスミル
  • フルバック

 などです。

 切れ刃の角度はいろいろありますが45度のものが多く市販されています。直角のものを「肩削り」や「ショルダーカッター」といい、正面削りにも使えますが、荒加工の場合、工具寿命と加工能率ともに45度のものより劣ります。
 角度が小さくなるほど切り込み量を小さくして送り量を上げていきます。高送り用の正面削りは切れ刃が丸めてあるか角度を鈍く作ってあります。

エンドミル

 「ソリッドタイプ」「スローアウェイタイプ」「ヘッド交換タイプ」「ろう付け」があり多種多様な工具があります。

ソリッドタイプのエンドミル

  • 工具の寿命がきた場合は再研磨できますが直径が小さくなります。
  • 側面の加工で仕上げ面がきれいになります。
  • 大径のものはかなり高価になります。
外周刃の形状用途
平行刃直角な側面の加工
ラフィング刃荒加工
テーパー刃勾配の側面加工
底刃の形状用途
センタ穴付き側面、肩削りは可能、ドリル加工は不可
センタカット側面、肩削り、ドリル加工も可能
ボールエンド曲面の加工
ラジアスエンド底面と側面のコーナーRの加工

刃先交換タイプ

  • それなり精度のはあるがチップ交換で誤差はでます。
  • 深い側面加工では仕上げ面はソリッドより劣ります。
  • φ10より小径のものはあまり見かけません。
  • ソリッドタイプより消耗品は抑えられる。

ヘッド交換タイプ

 チップではなく先に短いソリッドタイプのエンドミルを取り付けるタイプです。刃先の使用頻度が多いとき、工具の長さが必要なとき便利です。また、ヘッドの形状も豊富にあります。このタイプも小さい径のものは見かけません。

ろう付けタイプ

 鋳鉄(FC)の加工でよく使います。

その他

 少し特殊な加工に使う工具です。

サイドカッター

 側面の溝加工や、裏面を加工に使う。刃具を取り付けるため、底面(正面)の加工はできない。

Tスロット

 工作機械のテーブルなどのT型の溝など底面(正面)の加工できる。

アンギュラーカッター

 刃先になるほど径が大きくなる(バックテーパー)形状で勾配加工に使います。

まとめ

 工具構造には「ソリッド」「ろう付け」「刃先交換」「ヘッド交換」の4つありました。
 工具は「穴あけ」「バイト」「フライス」3つに分けてお伝えしました。

 穴あけ

ドリル代表的穴あけ工具
タップめねじを加工
リーマー仕上げ面や直径の公差があるとき

バイト

 バイトは旋盤がメインですがマシニングセンターでもボーリング加工で使います。

フライス

正面削り平面加工で使い、切れ刃の角度は鈍いほど送り量があがる。
エンドミル削り込み、溝加工、テーパーやR形状のものなど多数の種類がある。
その他サイドカッター、アンギュラーカッターなどもある。

 いかがでしたか? 
 入門、基礎といった感じなので、「もっと詳しく知りたい」と思っていただければ嬉しい限りです。

 以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。