【書評No.2】「幸せになる勇気」アドラー心理学の道標

ベストセラーの「嫌われる勇気」で一般的になったアドラー心理学ですが、内容に衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか?

  • トラウマは存在しない。
  • 承認欲求の否定。
  • 課題の分離。

「人間関係が楽になった」、「もっと自分らしく生きよう」そんな感想を持った人も多くいたと思います。しかし、実践していくにはあまりにも難しい内容ではないでしょうか?

今回の紹介する「幸せになる勇気」はアドラー心理学の実践編です。

幸せになる勇気」はこんな人にお勧めです。

  • 嫌われる勇気」に感銘を受けたが実践できない。
  • 他人との関係性をうまく構築できない。
  • 教育や指導について悩んでいる。

幸せになる勇気」にはこれらのヒントがあります。
その解決方法をピックアップすると以下の通りです。

  • 教育の目的は「自立」。
  • 競争原理から協力原理へ。
  • 運命のひとはいない。
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前作「嫌われる勇気」のおさらいはこちら⇓
【書評No.1】「嫌われる勇気」悩みは根源は承認欲求?

「幸せになる勇気」の著者

岸見一郎(きしみ・いちろう)
哲学者。1956年京都生まれ。専門の哲学に並行してアドラー心理学を研究。
日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。
著書「アドラー心理学入門」など多数。「幸せになる勇気」では原案を担当。

古賀史健(こが・ふみたけ)
株式会社ハトンズ代表。ライター。1973年福岡県生まれ。
書籍のライティングを専門として、ビジネス書などで多くのベストセラーを手掛ける。
ビジネス書大賞2014・審査員特別賞受賞。
前作「嫌われる勇気」刊行後、ふたたび岸見一郎氏を訪ね「勇気の二部作」完結編として「幸せになる勇気」をまとめ上げた。
著書に「20歳の自分に受けさせたい文章講義」などがある。

「幸せになる勇気」の概要

物語は「嫌われる勇気」から3年後の話です。

哲人からアドラー心理学を学んだ青年が中学校の教師なっていました。しかし、教育現場で限界を感じた青年はアドラー心理学を否定し、再び哲人を論破するため現れました。
前作同様二人の対話篇です。

教育の目的は「自立」

教育者は子どもに対してまず尊敬の念をたなければならない。尊敬は対人関係の基礎となる部分で、ありのままのその人を認めることです。

尊敬のボールは自らがそれを投げた人にだけ、返ってくるもの

「幸せになる勇気」より引用p48

そして尊敬できてこそ「共感」できるのです。

原因に注目すると過去の行いに対し賞罰が必要だと感じます。しかし、目的に注目するとこれからどうするかを考えはじめます
子どもの問題を解決するためには過去の「原因」ではなく、これからの「未来」を子どもと一緒に考えていかなければならないのです。

アドラー心理学では賞罰教育を禁じています。つまり、叱ってもいけない、ほめてもいけない。
賞罰は自分の思い通りに相手を操ろうとする行為で課題の分離に反することになります。仮に賞罰によって従わせたとしても「ほめられること」、「叱られないこと」が行動の基準になってしまいます。それでは「自立」できません。

誰かの指示に従っている方が楽な面もありますが、それは自分の人生ではありません。「自分の人生は自分で決めていく」それを教えることがリーダーや教育者の仕事なのです。

競争原理から協力原理へ

褒賞は最終的に競争原理を生み出します。

競争は敵を作り出し、敵意を持つと相手を陥れることを考えます。つまり、賞罰があるところには不正が生まれます

アドラー心理学では、人間の抱えるもっとも根源的な欲求は、「所属感」だと考えます

「幸せになる勇気」より引用p151

所属感とは「ここにいていいのだ」という感覚で、共同体への所属感を万全のものにするために他者からの承認を求める。しかし、承認欲求には終わりがありません

「わたし」の価値を、他者に決めともらうこと。それは依存です。一方、「わたし」の価値を、自ら決定すること。これを「自立」と呼びます。幸福な生がどちらの先にあるか答えは明らかでしょう。

「幸せになる勇気」より引用p152

他者に認めてもらうためには特別でなければなりません。特別になるには競争原理が働いてしまいます。

普通であることの勇気」をもって平凡な「わたし」を自ら受け入れることで他者を受け入れることができ、競争原理から協力原理へ切り換えることができます。

運命のひとはいない

アドラーの語る「すべての悩みは、対人関係の悩みである。」という言葉の背後には、「すべての喜びもまた、対人関係の喜びである」という幸福の定義が隠されているのです。

「幸せになる勇気」より引用p178

他者を尊敬し、信頼する。他者がどう思うかは自分ではどうすることもできません。

先に相手を信じ、そして信じ続けることは難しいことですが、ありのままの自分を受け入れる、ありのままの自分を信じることで、他者をも受け入れ、信じることが可能になります。
相手に求めるのではなく、自ら与えるのです。

他者から愛されることはむずしい。けれども、「他者を愛すること」、その何倍もむずかしい課題なのです

「幸せになる勇気」より引用p231

恋に落ちるのは本質的には物欲に取りつかれているのと同じです。

「出会いがない」、「運命のひとが現れない」と嘆く人は他者との関係を築く勇気が足らないだけで、傷つきたくないのが目的と考えられます。

仕事の関係は信用、交友の関係は信頼、愛の関係はふたりの幸せを築くことです。

たったふたりからはじまった「わたしたち」は、やがて共同体全体に、そして人類全体にまでその範囲を広げていくでしょう。

「幸せになる勇気」より引用p245

それが共同体感覚です。

「幸せになる勇気」の感想

3つの気づき

  1. まず他者を尊敬し信頼することが対人関係をはじめる。
  2. 他者を受け入れられないのは自分を受け入れられないから。
  3. 一方的な愛は単なる欲求で本当の愛とはふたりで育むもの。

まとめ:【書評】幸せになる勇気

人は一人では生きていけない。だから自分の居場所が欲しい。この所属感を簡単に手に入れようとすると他者からの承認を求めることになる。この感情には終わりがない。つまり、承認欲求を満たしても幸せにはなれない。

所属感を得る方法は他にもある。それが他者貢献、共同体感覚ということになるのだろう。

この「幸せになる勇気」から学んだことは「自分から行動しないと幸せになれない」ということ。当然壁にぶち当たることにもなりますが、トライ&エラーを繰り返すことでしか幸せにはなれない。

40年以上生きてきて薄々気づいていたが、「やはりそうですよね」という感じです。
厳しい道ですが、勇気をもらえる一冊でした。

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最後まで読んでいただきありがとうございます。
以上で終わりです。